カンボジアにおける商標拒絶:いかにして「MONTECONO」は二つの引用商標を克服したか
マドリッド制度に基づきカンボジアで保護を指定された商標が、暫定的な拒絶通報を受けることは、国際的な商標保護の複雑な環境下では決して珍しいことではありません。しかし、拒絶の根拠が一つの引用商標ではなく、同時に二つの著名商標との類似を理由とする場合、その困難度は格段に増します。これは単なる手続上の障壁を超えたものであり、出願人は「類似性」と「混同のおそれ」との境界線が緻密な法的議論の中心となる、極めて難解な法的構造の前に立たされることになります。
カンボジア知的財産総局(DIP)は、「MONTECONO」(国際登録番号1523946)について、「Zott Monte」(ドイツ)および「DEL MONTE」(米国)という著名商標との間で混同のおそれがあるとして、暫定的な拒絶通報を発出しました。この時点で、多くの関係者は本商標の保護取得の可能性が閉ざされたと考えました。「MONTECONO」商標は、極めて厳格で反論の余地が見出しにくい審査基準のもと、密な法的枠組みに絡め取られたような状況に置かれていたのです。
しかし、KENFOX IP & Law Officeの卓越した法的戦略により、強固な法理論、市場戦略の知見、消費者心理の理解を融合させた多角的な反論が展開され、予想を覆す結果が導かれました。本件は、商標審査上の困難を乗り越える新たなアプローチを示す先例として、極めて重要かつ有意義な意義を有しています。
背景
カンボジア知的財産総局は、商品区分第30類に属する商品に関して、「MONTECONO」(国際登録番号1523946)の保護を暫定的に拒絶しました。拒絶の根拠は、以下の商標との混同のおそれに基づくものでした。
- 「Zott Monte」(Zott SE & Co. KG、ドイツ):類似の製品に使用されており、「MONTE」の要素が際立つ登録商標。
- 「DEL MONTE」(Del Monte Foods, Inc.、米国):加工食品業界において広く知られる著名な商標。
異議申立戦略:『類似性』と『混同のおそれ』の区別
一見したところ、「MONTECONO」、「Zott Monte」、「DEL MONTE」の三商標に共通して含まれる「MONTE」の要素により、審査官は表層的な類似印象を抱くおそれがあります。このような初期段階における視覚的な反応は一見妥当にも思えますが、実務上の商標比較においては、過度な単純化を招く重大なリスクを孕んでいます。文字要素の一部が共通しているという事実は、実際には意味的または取引上の関連性が存在しないにもかかわらず、誤認を引き起こし、誤った連想や印象を生じさせるおそれがあります。
実際には、各商標の本質的な識別力は、その全体的構成、商標の機能的使用態様、および特定の商業的文脈に基づいて判断されるべきものです。このような「視覚的な罠」を多層的な分析によって解体しなければ、性急な結論が導かれ、適正な審査基準から逸脱する可能性が生じます。
KENFOX IP & Law Officeが構築した異議申立戦略は、三つの主要な柱を基軸とし、それぞれが強固な法的理論と説得力のある証拠に裏打ちされたものであり、カンボジア知的財産総局(DIP)による審査判断に対して直接的かつ実質的な影響を及ぼしました。
1.混同のおそれが存在しないことに関する詳細な分析
本項の中心的主張は、「MONTECONO」商標が引用された商標と混同を生じさせることはない、という点にあります。この立場を裏付けるため、視覚的外観、語構造、音韻的特徴、意味内容といった複数の観点にわたる包括的な比較分析を実施し、さらに関連する商品・サービスの性質も考慮しました。
- 構造 ― 商業的視覚印象:「MONTECONO」は、9文字からなる大文字の単語で、切れ目のない一体的な語構成を有しており、統一された独自の視覚的識別性を形成しています。これに対し、”
”「Zott Monte」は、赤い円内に配置された白色の「Zott」要素と、青色の「Monte」要素が視覚的に明確に分離されています。「DEL MONTE」も同様に、明らかに二つの語彙要素から構成されています。このような書体、色彩、構成方法の顕著な違いは、商業的印象を大きく異ならせ、拒絶理由において推定された視覚的類似性を否定する要素となります。
- 音韻的差異:「MONTECONO」は「/MON/TE/CO/NO/」の4音節で構成され、発音が長く、リズム的にも独特です。一方、「Zott Monte」および「DEL MONTE」はいずれも「/ZOTT/MON/TE/」「/DEL/MON/TE/」という3音節であり、アクセントの位置にも差異があります。このような音韻的相違は、商業的な場面でのブランド認識において重要な要素であり、消費者の記憶にも強く影響します。
- 意味上の識別性:「MONTECONO」は造語であり、一般的に使用される言語において固有の意味を持ちません。対照的に、「Zott Monte」は商号「Zott」と、「Monte」(言語によりカードゲームや確実性を意味する場合あり)を組み合わせたものです。「DEL MONTE」は既に確立された企業名として広く知られています。「MONTECONO」には特定の意味が存在しないことから、他の既知商標との誤認的関連性を回避するうえで有利に働きます。
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法的結論:上記の多面的分析に基づけば、単に「Monte」という要素を共有しているという理由のみで、混同のおそれを認定することはできません。視覚構造、音韻的表現、意味内容の各側面において明確な差異が存在することから、「MONTECONO」は独自性を有する独立した商標であり、引用商標の権利を侵害するものではないと評価されます。
2.国際的先例:知的財産当局による説得力のある証拠
混同のおそれが存在しないという主張を補強するために、高い証拠価値を有する国際的な法的先例が参照されました。具体的には、「MONTECONO」商標および「MONTE」要素を含む他の商標は、シンガポール、フィリピン、ラオスといった複数の法域において、既に登録・保護が認められており、これらの国々はいずれも商標の識別性に関して厳格かつ精緻な審査基準を有することで知られています。
本主張の中核は、シンガポールやフィリピンといった信頼性の高い知的財産制度における審査結果を活用し、「MONTECONO」が商業的に独立した識別力を有することを立証する点にあります。これらの法域において、他の「MONTE」を含む商標が共存している状況下でも「MONTECONO」が登録を認められている事実は、本商標が視覚的印象、音韻構造、意味解釈の各点において明確に区別されることを示す客観的証拠となります。
もちろん、各国の審査基準に一定の差異があることは認識されていますが、著名な知的財産庁が本商標の登録を許可していること自体が、他国における評価の一助となり得ます。この点は、カンボジアの審査官に対して評価の視野を国際的に広げると同時に、進んだ法域で登録可能とされた商標について、カンボジアがこれに反する正当な理由を有するのか、という建設的な圧力も意味します。
さらに重要なのは、「MONTECONO」の識別性に対する国際的なコンセンサスが、単なる法的議論を超えて、実際の商業的承認をも示している点です。同商標は、複数の市場において独立したブランドとして受容・認識され、利用されており、現代の法的および商業的枠組みにおいて混同を生じさせない商標であることが、より一層明確に裏付けられます。
3.カンボジア国内における先例:公平な審査基準構築の基盤
戦略的に重要な論点は、カンボジア国内において「MONTE」という要素を含む商標が商品区分第30類において登録を認められた先例の存在を特定し、これを提示することにあります。具体的には、PHAN NAM MONTE ROSA TRADING JOINT STOCK COMPANY により出願された商標登録(登録番号:KH/2012/40197)()は、「MONTE」の要素を含んでいながら、「Zott Monte」および「DEL MONTE」との間に所有権上の関係を有していないにもかかわらず、2012年2月29日付でカンボジア知的財産総局(DIP)により登録が認められました。
「Zott Monte」および「DEL MONTE」の両商標がいずれも商品区分第30類においてDIPに登録されており、かつ「MONTE」という要素を共有しながらも別個の法人により保有されているという事実は、「MONTE」という語句自体が識別性を決定づける要素ではないことを明確に示しています。むしろ、商標全体の構成、図形的表現、視覚的識別要素が十分に異なっていることにより、消費者が各商標を認識・区別できる状態が保たれているのです。
この主張は、DIP自身の過去の審査実務における多様性を浮き彫りにするだけでなく、評価方法の一貫性に関する内部基準を構築するものであり、「MONTE」を含む他の商標に対して保護が認められているにもかかわらず、「MONTECONO」のみを拒絶することは、手続的公平性および透明性に関する正当な懸念を生じさせます。「MONTE」を含む各商標は、その個別の構成や使用文脈に即して独自に評価されるべきであり、画一的かつ抽象的な前提に基づいて判断されるべきではありません。
さらに強調すべきは、「類似性」と「混同のおそれ」という概念が相関関係にあるとはいえ、決して同義ではないという点です。構成要素に一部類似があるという事実のみでは、消費者の混同を直ちに招くものとは限りません。重要なのは、その類似の程度が混同の閾値を超えているか否かであり、本件においては「MONTECONO」が明確に独立した識別標識として機能しており、市場における認識を阻害するものではないことが立証されています。
結論
明確に構築された法的論理と数多くの説得力ある証拠に支えられた本件において、当方は、国際登録番号1523946号に係る「MONTECONO」商標に対するカンボジア知的財産総局(DIP)の暫定的拒絶通報を撤回させることに成功しました。最終的に保護が付与されたという決定は、当該商標が本来的に有する識別力および明確な識別性の強さを再確認するものであると同時に、精緻かつ戦略的に構築された異議申立の有効性を実証する力強い証左となりました。
この結果は、カンボジア知的財産法の柔軟な適用と、本商標が他の複数法域において広く受け入れられているという事実への繊細な配慮によって導かれたものです。本件は、HARIGOVINDRAJUにとって単なる法的勝利にとどまらず、国際的な商標登録の障壁を乗り越えるにあたって、綿密な準備と強固な法的主張の重要性を示す貴重なケーススタディでもあります。
KENFOX IP & Law Officeにとっても、本件の成果は、同事務所が当該地域における知的財産分野で先導的役割を果たしていることを改めて証明するものであり、豊富な実務経験に基づくだけでなく、高度な法的思考を具体的かつ実効的な保護結果へと結びつける能力を有していることを明らかにするものです。
QUAN, Nguyen Vu | Partner, IP Attorney
PHAN, Do Thi | Special Counsel
HONG, Hoang Thi Tuyet | Senior Trademark Attorney
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