ベトナムにおける故意の商標権侵害の認定方法について?
ベトナムでは、商標権者の許可なく、保護された商標を故意かつ意図的に使用し、混同を引き起こす、またはブランドの信用を不当に利用する行為が、「故意の商標権侵害」として認定されます。こうした故意の侵害行為は、行政手続および刑事手続の両面から取り締まりの対象となります。
行政手続では、所轄機関により罰金その他の行政制裁が科され、刑事手続では、侵害行為が商業的規模で行われた場合や、模倣品を伴う場合などにおいて、より厳しい刑事罰が追及されます。侵害行為における故意性・意図性の有無は、科される罰則の程度に重大な影響を与えるのみならず、模倣品・海賊版対策全体の法執行戦略にも重要な意味を持ちます。
KENFOX IP & Law Office は、ベトナムにおける刑事および行政手続において、故意の商標権侵害がどのように認定され、対処されているかを検討しています。これは単なる理論的な問題ではなく、実務上の救済措置および制裁手段に直接関わるものであり、知的財産権保護を効果的に実現するための重要な要素となっています。
1. ベトナムにおける故意の商標権侵害および刑事責任について
ベトナム刑法第226条は、商業的目的または不正な利益を得る目的で、商標を含む工業所有権を「故意に」侵害した者に対して、刑事罰が科されることを明確に規定しています。ここで使用されている「故意に」という文言は、当該侵害行為が意識的かつ意図的でなければならないことを意味し、過失または偶発的な侵害はこの刑事規定の適用対象外であることを示唆しています。
この点は、刑法第85条に定められた一般原則とも一致しており、同条では刑事責任を判断する際に「故意または過失による行為」の存在を立証する必要があるとされています。刑法第85条は、捜査および起訴において「有責性の存在(故意または過失)」を確認することを国家機関に義務付けており、これは商標権侵害事件においても適用されます。したがって、検察側は被告人が当該犯罪を犯す意思を有していたことを立証しなければならず、これはベトナムにおける商標権侵害事件において「故意性」が極めて重要な要素であることを改めて強調するものです。
刑事責任を構成する具体的な基準:
ベトナム刑法第226条は、故意の商標権侵害に該当するための適用基準を以下のように規定しています。重要な要素は、「商業的目的」または「不正な利益を得る目的」による「故意の侵害」であることです。
- 工業所有権の侵害行為:行為がベトナムで保護されている商標の侵害であり、かつ当該商品がベトナム知的財産法第213条第2項で定義された「偽造品」に該当すること。
- 不正利益の金額:1億ベトナムドン(VND)以上から3億VND超までの不正利益を得た場合。
- 商標権者の被害額:2億VND以上から5億VND超までの損害を発生させた場合。
- 侵害商品価値:2億VND以上から5億VND超の価値を有する商品が対象となる場合。
ベトナムの裁判所は、刑事事件、特に商標権侵害事件において、被告人の故意性および動機を総合的に考慮し、適切な罪状および量刑を判断する傾向があります。ベトナムで商標権侵害に基づく刑事有罪判決を得るためには、検察側が侵害者が他人の商標を用いて不正に利益を得る目的で「故意に」行動したことを立証しなければなりません。この「故意の存在」は、科される刑罰の重さに大きく影響することになります。
2. ベトナムにおける行政手続上の故意による商標権侵害
ベトナムは、行政手続においても故意による商標権侵害の概念を間接的に認めています。第15/2012/QH13号「行政違反処理法」は「故意の侵害」という用語を明示的には用いていないものの、「加重事由」の概念を通じて行為の故意性に対応しています。
同法第10条では、加重事由として考慮され得るいくつかの要素を列挙しており、以下のような場合が該当します:
- 行政違反が組織的に行われた場合
- 行政違反が繰り返されている場合、または多数回行われている場合
- 職権や地位を乱用して行政違反を行った場合
このように、「故意の侵害」という語句こそ用いられていないものの、同法は計画的・反復的・権限濫用的な侵害行為に対しては、より重い処罰が必要であることを認識しています。「加重事由」の制度は、過失的な侵害と故意的な侵害とを実質的に区別するものであり、後者にはより深刻な法的結果が伴うことになります。
QUAN, Nguyen Vu | Partner, IP Attorney
PHAN, Do Thi | Special Counsel
HONG, Hoang Thi Tuyet | Senior Trademark Attorney
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